❖コロナウイルス対策❖

鍼灸はコロナ対策に最適な方法のひとつです

1.はじめに

「コロナ対策に鍼灸?」と、ほとんどの方が思うことでしょう。病院ではもちろんのこと、メディアなどでもほとんど取り上げられないですからね。鍼灸が浸透していないわが国では無理もないことです。それはそれとして、この騒動を機に、なぜコロナ対策に鍼灸が最適な方法のひとつであるのかを、鍼灸のことをよく知っていただくためにも書いてみたいと思います。

 

2.感染することを前提に行動するべきこと

コロナウイルスの感染拡大を止めることは、インフルエンザなどと同じように、困難です。実際に新型コロナウイルスはパンデミックに至りましたし、拡大はしばらく苛烈を極めることになるでしょう。ならば、感染することを前提に行動していく方が、現実的ではないでしょうか(できれば感染したくはないのですが)。


3.感染予防や拡大抑止だけでははなはだ不十分であること

コロナウイルスに対する有効な治療法が確立されていない今、できることは何か?

日頃から消毒や防護といった外敵を駆逐したり遠ざけたりすることばかりに気を取られるのではなく、自分のコンディションが万全であるのかをこれを機に見直してみてはいかがでしょうか?

うがいや手洗いなどの感染予防、マスクや他人との接触制限などによる急拡散の抑止の重要性は、周知の通りです。これらは不可欠な対処法ですが、それだけでは感染への十分な備えとは言えません。

冷静に考えれば、いつまでもこのような対処をし続けることの意味も問うていかなければなりません。本当に必要なのか、それを続けることで何が起きるのかを。なぜなら、感染するのは人であり、拡散するのも人だからです。

誤解を恐れずに言えば、感染は避けられません。感染することを前提にすれば、おのずと行動も変えざるを得ないと思います。たとえ対コロナウイルスの有効な治療法が確立しても、それは変わることがありません。
 

4.体調をととのえていくことがなによりも大事であること

では、何をしたらよいのか。

だれもが知っている体調の管理です。

まず向き合うべきは、ウイルスに立ち向かうための城となる自己の心身でなくてはなりません。安定した心、充実した体があってこそ、目に見えないウイルスとも戦うことができるというものです。不安や恐れに萎縮した心、疲労困憊した体では、丸裸同然、どんなに外に対する策を講じても、その効力は半減どころかほとんど意味をなさない可能性すらあります。
現に重症化するのは高齢の方や持病のある方である傾向があり、多くは軽度の症状で済むようです。そして、不顕感染で終わる人も多いのではないかとも言われています。もちろん、若い方や元気な方(自称*でもひどい症状に見舞われたり、重症化する場合もあります。
 こうした違いは、ひとえに個々人の免疫力の差にあると言っても過言ではないでしょう。

・十分な食事と睡眠
・休息
・適度な運動や発散
・快楽の充実

これらは私たちがよく知っていて日頃からできる王道ではあるものの、難しくもあります。頑張りすぎず、できることから少しずつやっていくことが大切です。そうすれば、目には見えなくとも自然と変わってくることでしょう。

コロナウイルスが私たちに突きつけたものは、人も動植物と同じく、個々が自然の生存競争の中にあるという冷酷な事実です。相手を思いやる心、少なくとも家族を思う気持ちは、ひとり人に備わったものではありません。ただ人のみがウイルスを認識し、そのための悲喜劇を演じているのです。

自分を守ることは、大切な人を守ることに通じていることは間違いありません。

今言えることは、自分の守り方を考えるべき時期に来ているということでしょうか。

 

5.こんな今だからこそ免疫力を高める鍼灸を

免疫力を高めることと言えば、鍼灸もはずすことはできません。

鍼灸は、「気をめぐらす(ととのえる)」ことでその人の持つ回復力(自然治癒力)を高め、慢性的な苦痛や様々な症状の全体的な改善を促していきます。諸症状の改善の結果からみて、循環がよくなることで自律神経の変調や心身のバランスが整っていくということが言えます。また、長く治療をされている方の多くは、「疲れにくくなった」「いつもよりも頑張れる」「浮き沈みが減った」「カゼをひかなくなった」「顔色(心)が明るくなった」「肌つやがよくなった」など調子のよさを感じられることから、免疫力の向上や体調の維持にも寄与していることは明らかです。

目に見えないものに恐怖し、それにばかり気を取られていると、大事なことを見失うばかりか、そのために不要なストレスをかかえることにもなります。それよりも、目に見えない自分の免疫力を信じれるようになるための策を講じることの方が何倍も前向きな行動だと思います*

定期的な鍼灸治療により、心身は丈夫になり、様々な外的要因(季節・天候・ウイルス・細菌・人間関係など)に柔軟に対応できるようになっていきます。カゼやインフルエンザはもちろんのこと、このたびのコロナウイルスであっても、鍼灸が最適な対策のひとつになることがおわかりいただけるのではないでしょうか。

こんな今だからこそ、①少しでも感染の可能性を低くするために、あるいは②感染してもより軽く済むように、ひいては③医療崩壊を防ぐためにも、生活の在り方に目を向け、鍼灸による事前(予防的)治療という積極的かつ攻めの選択で元気になることを是非お考えください。

 

6.事後(発病後)から事前(予防)の治療へ

すでに自粛のために、イライラやうつ気味、不安傾向など心に問題を抱える人が増え、その果てのDVや虐待、離婚、殺人といった家庭内の不和にまで影響が及んできています。

一番の敵は、ウイルスではなく、不安や恐れです。

今こそこれまでの治療概念をおおきく変える時です。ウイルスを避けることから、ウイルスに負けない心身を維持することへ、それこそが自分を守り、そして大事な人を守ることにつながっていくものと信じております

より多くの方が生活の一部に鍼灸を取り入れられることを切に願っております。

 

2020/03/25掲載 03/08改訂 04/26増補

 

追記1

緊急事態宣言が出た今、ほんとうに怖いのは次の4点。

①感染を恐れて疎開する人々が地方にウイルスを伝染させること。

②ウイルスのために仕事を失い貧困にあえぐ人が大量に出て、混乱をきたすこと。

③流行が長く続き、その猛威を極度に発揮した時、自暴自棄となって誰も逃げ隠れしなくなること。

④感染者数が次第に減少し、緊急事態宣言が解除されてから、人々が気を緩めた時。避けていた人混みを作ることで感染がぶり返すこと。

デフォー『ペスト』から読み取れる17世紀の人々の動向は、今とほとんど変わりがない。また、無症状の患者が多く、そのために感染がより拡大したという点でも共通している。大きく異なるのは、ペストの致死率が7割ほどであること、またペスト蔓延中は常に方々からかなりの義捐金が集まり、職を失った人や貧困層の経済による死を防いだこと(ただし、ペスト終息後は救恤金が集まらず、貧困者が続出したとのこと)。

現在のコロナウイルスによる死亡率から見て、コロナがペスト以上の猛威を振るうことは考えにくい*。ただし、季節性でないと見られることから、終息するにはある程度の蔓延が必要であり、だらだらと続くことが予想される。少なくともワクチンや特効薬が作られるまでの我慢となる。

とはいえ、どこまでも体力勝負であることには違いない。それがペストであっても*

2020/04/08掲載

 

追記2

緊急事態宣言が全国に広げられた今、これからの日本の感染拡大はどうなるのだろうか。

人命を第一に考えれば、何よりも医療崩壊を防ぐことが最重要の課題となるのは間違いない(同時に経済困窮による死も防がなければならない)。そのための全国での緊急事態宣言である。これまで失敗してきた同じ病院での混合入院は早急にやめなければならない。院内感染を防ぐことは不可能で、それによる事態のいっそうの悪化は悲惨というよりほかはない。コロナに特化した医療施設の充実が急務であり、その早期実現を願う。

ところで、日本の緊急事態宣言が欧米のロックダウンよりもかなりあまいということはよく言われているところである。が、それには意外な効用もあるのではないかと思っている。簡単な理由で、平時よりもかなり多くの人が、日中に散歩やジョギングをしたり、公園で遊ぶなど、日光に当たって体を動かしていることにある。適度な運動、それも陽に当たる状態であれば、室内や夜にするよりも体にとってはよりよい結果をもたらす。欧米では、それを一切禁止しているため、肉体的だけでなく、精神的にも大きなダメージを与え、たとえ感染拡大が落ち着いても、人々の心身はボロボロで、ロックダウン解除後の感染の急拡大や死者増加の恐れも可能性としては高いと思われる。そういう意味で、日本での拡大は一定程度は進むとしても、ロックダウンを経験している欧米の人々に比べ、相対的に心身が安定しているはずであり、緊急事態宣言終了後も再拡大はあるとしても、被害は少なく済む可能性が高いと言える。

感染することを前提に考えれば、現在の日本のやり方は間違っていない。繰り返しになるが、安定した心身こそが、①感染の可能性を低くさせ、仮に②感染してもより軽く済むための絶対条件となることを忘れてはならない。私たちは、共存するしか道はないのだから(ウイルスと戦うことはできないのだから)。

2020/04/19掲載

*元気と感じることはとてもよいことですが、その感覚と実際の状態が一致しているとは限りません。
あなたをとりまく環境は、すべて順調ですか。ねつきの良し悪し、夜間の中途覚醒・小水・夢の有無、寝起きなど、いかがでしょうか。大便は毎日でているでしょうか。下痢しやすかったり、便秘だったりしないでしょうか。肩こりや腰痛、頭痛、冷えやほてり、気分の浮き沈みなどありませんか。天候や季節によって特定の症状が出たりしませんか。疲れがたまってくるとヘルペスや帯状庖疹、円形脱毛が発症したりませんか。服薬中ではありませんか。
日頃、あまり気にしないようなささいなことであっても、その人の消耗度というものが如実に表れています。
鍼灸では、そうした大小様々な状態を総合的に判断し、全身的な治療をしていきます。

 *東洋医学には古くから「未病治(未病をおさめる)」という考え方があります。病気の予防や体調管理も含まれるもので、それと似た発想が兵法にも「無形の勝ちをおさめる」としてあります。簡単に言えば、結果が目に見える形でわかるのではなく、誰も気がつかないうちに病の芽を摘み、勝ちを得るのが最善であり、それこそが真骨頂だというのです。鍼灸が予防医学とも言われる所以です。
 『孫子』形篇「見勝不過衆人之所知、非善之善者也。戦勝而天下曰善、非善之善者也。故挙秋毫不為多力、見日月不為明目、聞雷霆不為聡耳。(勝ちを見ること衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非ざるなり。戦い勝ちて天下善なりと曰うは、善の善なる者に非ざるなり。故に秋毫を挙ぐるは多力と為さず、日月を見るは明目と為さず、雷霆を聞くは聡耳と為さず。)」。

*ペストの死亡率は約7割、1665年のペスト流行ではロンドン市内の25%(10万人)が死亡したと言われている。恐ろしいペストでさえ、ロンドンの人々を全滅させることはなかったことを考えても、コロナが全世界でどんなに猖獗を極めてもこれほどにはならないだろう。

*命のいとなみがつづく限り、ウイルスの変異もとめられない。ウイルスを滅ぼすことができるとすれば、媒介するすべての命を絶たなければならない。そして、人も例外ではなく、それを願う人がまずもってその対象となることはまぬがれないだろう。ウイルスを敵と認知しているのは、唯一、人だけなのだから。

コメントは停止中です。