周囲が病人に仕立てあげる

体調の善し悪しの判断は、当の本人が勝手にすることであるが、特に幼時にあっては、両親、祖父母、友達の親、近所の人、学校の先生など、周囲の大人が代行する。もし、その中に神経質な大人が一人でもいたら注意せねばならぬ。なぜなら、その者は必ず周囲を巻き込んでことさらに騒ぎ立てて本人を無理にでも病人に仕立てあげようと脅すからである。もともと無頓着だった本人も、神経質な周囲によって不安を植え付けられ、ほどなく本式の病人になってしまう。ひとたび脅しに屈したが最後、不安の芽は事あるごとにすくすく育ち、わずかなことにも過敏になる神経を立派に備えた大人が、こうしてまた一人できあがるのだ。

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