幼い頃より西洋医学に慣れ親しんだ私たちには、すでにそれを理解する素地が備わっているし、また鍼灸師養成機関での教育の大半が、鍼灸ではなく、医学の修得に充てられているからだ。
けれども、鍼灸の高い技量を兼ね揃える医師の育成は、困難を極めるであろう。ましてや医師が、治療法に鍼灸を選ぶための診断基準を確立することなど、それ以上であるに違いない。
鍼灸は、疼痛治療のための単なる物理療法ではまったくないからだ。
医師が、〔今の医学的ではない〕陰陽五行を運用することはもちろん、医学に組み込むことなど、決してたやすいことではない。
第65回日本東洋医学会学術大会(於東京)にて感じたことである。